2013年02月10日

救いの女神

IMG_1045 (2).JPG

それは、ほんのちょっと油断したからだった。
エレベーターの中で気づいた。
セキュリティカードは玄関に残したままだった。
テスは箱から降りても震えていた。
この状況を老人のシマッタ顔で状況を理解したのか、
あるいはただ寒かっただけなのかは
不確かではあるが、確かに震えていた。
寒さ地獄から抜け出るカードを忘れたのだ。

老人も初めての時よりずっと余裕はあったが、
さてどうしたものかと思案投げ首という態だった。
というより、このビルの住人の誰かが通りかかってくれない限り
救われないのはわかっていたから。

ただ、朝と違って中途半端な午後3〜4時前後だったから
誰が救いの神になるのか、全く読めなかった。
テスをなだめながら待つこと10分前後か、
その神は姿を現した。
ダウン風コートを着て眼鏡をかけた女神だった。
エレベーター向かう彼女に
痴漢などと間違えられないように
十分気を付けて老人は声をかけた。
「すみません、カードを忘れたので一緒に入っていいですか?」
「はい」と女神は目を合わせないようにして答えた。
老人は彼女の気持ちはよくわかったので
中へ入る時に「すみません」と感謝の気持ちを込めて礼を云った。
彼女は何て返事をくれたのかは忘れたが、
落ち着いて返事を返してくれた。
彼女は変な爺さんと狭い空間にいる恐怖を感じさせない態度だった。
老人はテスと自分が救われたことよりも
その女神の凛とした態度に感激していた。
毛の序が何階かで先に降りて行く時に
老人はもう一度声をかけた。
「ありがとうございました。ありがとう。」
女神は落ち着いて言葉を返した。
「どういたしまして」
凛として、素晴らしいレディの振る舞いだった。
老人は自分とテスが助かったことも忘れ、
清々しい気分に浸った。
同席していたが、テスには理解の出来ない世界であった。
posted by てす at 00:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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