2012年12月04日

老境

IMG_1280.JPG

テスはまだ完治していないみたいだが、
自分の既得権はしっかり主張する。
これは脳幹だけではなく大脳皮質も動員しているのだろう。
いつもならソファーにかけ登って老人が座るのを待つのに
登る直前になって躊躇して断念することの方が目立つ。
脳幹だけなら飛びついて痛みに気付いて中止するところだが
今飛ぶと痛いという記憶が彼を止めさせている。
そして、老人に憐れみを乞う目で見やるところは
一歩進んで、なんとなく狡猾さを感じ、演技を感じ
完全に旅役者の域に達している。

だが、完治していないことも確かなので
老人としては気がかりではある。
まだ皮膚炎の薬はあるのでサマーズへ行くのも躊躇われる。
と迷っていたら、“脊椎症”と書いた薬方があった。
以前下半身不全麻痺の時の薬が残っていたのだ。
ちょうど皮膚炎の薬は少しづつ減らそうと先生に言われていたので
皮膚炎用薬は隔日投与にし今日は脊椎の痛み止めを与えた。
先生への報告は皮膚炎の薬の効果がみえているので
その時に一緒に相談しようと考えた。

最近テスは老人がやさしいことをいい事に
ちょっと調子に乗っているように思っていた。
このままではロスが年末帰ってきたときに
なにか言われることは必定だから、なんとかせねばと
焦りを感じて対策を検討し始めた。
だが、テスの既得権は回復させるの
は並大抵のことではない。

老人は今頼まれている仕事のことも気になるし、
ほおっておいても年末が近づいてくるし、
心ばかりが気忙しく対策は実行に至っていないのだ。
ロスに対しては居直る手もあるが、
テスに対しては、これはもうどうしようもなく
躾けが至らないまま今日に至ったとしか言いようがない。

今更簡単に剥がせるような既得権ではないことは
周囲のものは誰でもわかっていた。
だが、老人が加害者みたいに言われるのはどうにも癪に障る。
そこで老人はそこでもう一度躾けを試みてみようと考えた。
泥棒が手当たり次第に荒らした後、
途中で気づいて慌てて指紋を消し始めたようなものである。
どこかに必ず消し残しがあるに決まっていた。

といっても、ボケが既に始まっている今となっては
その位思いつくのが精一杯だった。
老人はこの程度の犯罪心理学は心得ている筈だが
ボケがそれを夜霧のようなヴェールで包み込み始めていた。

最近物事をしていて自分が何をしようとしているのか忘れてしまうことが多い。
少し以前なら一二歩戻りかけたところで思い出したものだが、
この所は元の場所まで戻っても思いだせないことが増えてきて
嘆げかわしいこと甚だしいが、まさに“老人”の域に達していた。
人生での“深い秋”である。

posted by てす at 08:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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