2013年02月16日

3回目

IMG_0612.JPG

またやってしまった
今日は休みで老人は片付けものをしていたがテスが騒ぐので郵便物を取りに行った。
下りはICカードは不要だから気づくのが遅れる。
降りてすぐに気が付いたがすでに遅し、ドアは無情に閉じられた。
まだ朝6時前位だったろうか、
そんな時間に誰が来ようかと諦めながらも
待つしかない局面だ。

もう少し以前ならばコーギーの散歩をこの時間にしている人がいた。
強い風にICカードが飛ばされて無くし、
結局はエレベーターの中に吸い込まれて居たのを見つけてくれた人だ。
でもコーギーを肩に担いで散歩に連れ出していたその人は
最近見ないから多分引っ越してしまったのだろう。

老人は3回目になると慣れたものでパニックにもならず落ち着いていた。
防寒具はしっかり着ていた。
テスの震えが腕に伝わってくるのが気になるが
慌てたってどうせ誰かが来なきゃレスキューされないのだと
割り切っていたからだろう。
エレベーターの存在階を示す番号に点くライトが
動くのを見ながらそんなことを思い出していた。

どのくらいたったのだろうか、
携帯ももってこなかった老人に
天の助けが来ることを示す明かりは
だんだんあがって行き9階で止まった。
しめた、誰かが下りてくる。

ドアが開いて姿が見えて老人は少し緊張した。
いつも出会った時にあまり声を出さない人だ。
でも、そんなことで躊躇する余裕はないのだ。
「すみません、カードを忘れちゃって、
お宅のカードでお願い出来ませんか。」
その人はこれだけで納得したらしく無言のまま
登りに必要なエレベーター内のパネルにICカードをあててくれた。
最初にあてた時パネルの認証サインが出ず、彼は一瞬にこっとした。
その微笑みはというより目的通りにいかなかったことへの苦笑いだった。
だが、傍で見ていた老人にとって、
いつ遭遇しても無言で無表情な、もっと言えば
声が出ないで口元が捩れているような表情しか知らないものにとっては
あのはにかんだ微笑みは彼に対する見方を変えた瞬間だと言っていい。
老人は深々と「ありがとうございます」と礼をした。
一方彼は振り向きもせずその場から姿を隠した。

posted by てす at 15:44| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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